【火災原因調査】放火の否定。火災原因判定書、文章例をチェック。内部放火・外部放火にあらず。

火災原因調査

こんにちは。
元消防士YouTuberの
KIYOYUと申します。

今回は火災原因調査の中でも、
火災原因判定書における
「放火の否定」について、
具体例を用いて
解説していきます。

否定する目的

火災調査の基本ですが、
火災の原因が
例えば
「電気配線によるもの」
としたいのであれば、
それ以外の原因として考えられるものは
否定しなければなりません。

関係者の供述、
出火時の現地周辺の様子など、
多方向から根拠を集めて
文章を組み立て、
立証しなければなりません。

つまり、
電気火災以外の原因を
否定できるような根拠を集め
論理立てをするのですね。

出火原因の判定

項目としては以下の内容が考えられます。

•放火について
•たばこについて
•電気関係について

など。
主なものは
上記のとおりです。

今回は、放火について
否定するパターンで考えます。

「電気関係」が原因とするなら、
本来ならば「放火」だけでなく、
「たばこ」などの可能性についても
否定する文章を考えます。

放火を否定する文章(例)

今回は、
建物の内部から出火したという
想定で文章を考えます。
また、「在館者」については
居住者や内部者、火元責任者と
パターン分けしてご紹介します。

文例① 昼間に出火のパターン (出火箇所2階、火元責任者1階に在館)

•放火について

ア 出火時の出火建物の施錠状況から考察すると、火元責任者が建物1階に鍵の施錠をしていたことは、火災発生時に玄関のドア越しに外部から火災を知らされたことからも矛盾はない。
また、出火建物内には火元責任者が在宅していたので、外部者が建物外周部から危険なリスクを冒してまで建物2階へ侵入するような行為は考えにくい。

イ 立地条件などから考察すると、住宅の密集した場所であること。また、出火時刻は通勤通学時のピークを過ぎてはいるが、平日、週明けの月曜日であり人目につきやすい時間帯である事実。

ウ 以上ア及びイを考察すると、外部者が建物内へ侵入し放火することは考え難い。

従って、放火による出火は否定する。

文例②昼間に出火のパターン (出火箇所1階、内部者在館)

•放火について

ア 「実況(鑑識等)見分調書(第1回) 3焼損状況(10)北川式ガス検知器の測定記載のとおり、」
(→※実況見分調書のある箇所を引用した場合にこのような書き方をします。)
南西側和室6畳の東側の床面の2箇所で、北川式ガス検知器を使用しガス測定を行うが、油脂反応は見られなかったことから、助燃材は用いていない事実。

イ ○○○○は出火時に外出中であったことから内部者による放火の可能性は否定する。
出火出場時における見分調書より、
施錠されていない箇所も見分できたが、
出火時は日中で、人通りも多い時間であったため、外部者による放火の可能性は低い。

従って、放火による出火は否定する。

文例③深夜に出火のパターン (出火箇所1階と2階の間[1階の天井裏]、居住者在館)

•放火について

ア 出火時、建物には施錠がされ、居住者も建物内にいたこと。

イ 建物の構造上、外部から天井裏に侵入することは、不可能であること。

上記アからイより、外部者が建物内に侵入し放火する可能性は考えにくい。

従って、放火による出火は否定する。

内部放火と外部放火

文例のように、
内部放火と外部放火を分けて
否定する場合もありますが、
分けない場合もあります。
特に決まりはありません。

内部放火を否定する場合、
文例①や③のように、
建物内部からの出火であっても、
外部から建物内に侵入者が入り、
火をつけた可能性も
あります。
そのような可能性も
否定する文章を作ります。

文例②のように、「イ」の項目で
内部、外部の双方について
放火の可能性を
否定してしまう場合もあります。



 

油脂反応について

文例②で
油脂反応の結果を引用したのは、
もし油脂反応があれば
何者かが放火しようとする
明確な意思があったとも
考えられるからです。

もし放火犯が効率よく火をつけたいと
考えるならガソリンや灯油を使うことも
ありますね。

油脂反応を見るためには
北川式ガス検知器
というものを使いますが、
これはガソリンや灯油などの
油脂反応を見ることができます。

調査書類のうちの一部
「写真台帳」では油脂反応が無かった
証拠となる写真も添付します。

調査書類の構成を確認したい場合は
以下の記事も参考にしてみてください。



 

主な着眼点

•油脂反応がないこと。
•施錠する習慣があること。
•出火場所が人目につきやすい場所であること。
•出火時間が人や車の往来が多い時間帯であること。
•建物の構造上外部から内部に侵入できないこと。

一例ですが、
上記の各項目に焦点を当てて、
放火を否定していきます。

 

最近の火災傾向

放火による火災は昼間は建物内から、
夜間は建物外周部から出火するのが
一般的でした。

しかし、防犯カメラの普及により、
最近は放火火災の件数は
減少傾向にあるようです。

こうした傾向はあるものの、
固定観念は持ってはいけないのが
火災原因調査の基本です。

現場や付近の状況から判断して
放火を否定できるようにしましょう。



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